さ霧消ゆる湊江(みなとえ)の
舟に白し 朝の霜
ただ水鳥(みずとり)の声はして
いまだ覚めず 岸の家
烏(からす)鳴(な)きて木に高く
人は畑(はた)に麦を踏む
げに小春日(こはるび)ののどけしや
かえり咲きの花も見ゆ
嵐吹きて雲は落ち
時雨降りて日は暮れぬ
若(も)し燈火(ともしび)の漏(も)れ来(こ)ずば
それと分かじ 野辺の里
[ Romaji ]
霧が晴れて白い舟が静かに浮かぶ様子を思い描くと、朝の冷たさと同時に穏やかな時間が流れていることが伝わってきます。水鳥の声だけが響く静けさに、まだ眠りの名残があるように感じました。岸では人々が働き、麦を踏む音が生活のリズムを刻んでいて、のどかな日差しが心を和らげてくれました。季節の気まぐれで花が戻る場面には驚きと嬉しさが混ざり、やがて嵐や時雨が訪れて日は暮れていく変化に、自然の強さと優しさが同時にあることを知りました。もし灯りが見えなければ見分けがつかないほど静かな里の風景に、そっと寄り添いたくなる気持ちが湧きました。