桜、猫、電車の一言メモ
トンネルを抜けた先に広がる無機質な白が、静かに心を揺さぶる描写に惹かれました。過ぎ去った日々の断片を拾い集めても元の形には戻らないという諦念があり、過去に頼り切っていた自分がいたと感じたこともありましたが、今は手を取り合うことで迷子にならないようにしようという優しさが伝わってきます。何気ない昼下がりの仕草や、しまい忘れた箱の存在が記憶の重みを示していて、思い出せないことへのもどかしさと、それでも繰り返し口にする合言葉めいた言葉で自分を誤魔化す弱さが同居しているのが興味深かったです。景色が零れていく感覚が淡く描かれていて、長いトンネルの途中で出会う他者の無関心さに触れた瞬間の孤独が静かに胸に残りました。