矢野絢子「ふたつのプレゼント」歌詞

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「ふたつのプレゼント」歌詞

歌手:矢野絢子
作詞:矢野絢子
作曲:矢野絢子


クリスマスが来るたび私の名前を
思い出す人がいるのを私は知っている
どんなに時が経ってもたった一瞬でも
その人はきっと私の名前を思い出してくれる

二つの時に引っ越した小さな町は田舎町
家と山と畑ばかりで浅い川が流れてた
父さん母さん仕事人スーツと白衣がかっこよくて
新しい家で兄ちゃんと二人の夜も怖くなかった

雨が降ったら町中川で茶色い水にどぶって遊ぶ
探検隊や姫や絵描きや毎日遊んで忙しい
小学校になるころ父さんは一人はぐれてた
働き者の母さんの後姿は真っ直ぐだった

いつからか四人の朝食は空気が重いと知っていた
私は一人しゃべって笑って知らないふりをしていたさ
大好きな友達と日が暮れるまで遊んで帰り
黙って私の布団で泣く母さんと眠ったよ

時々だけど父さんは私を連れて日曜市へ
父さんの真似してみたりぶら下がって歩いてみたり
一番嫌いなお正月は父さんと会社の人たち
お酒臭くてうるさくてでもお年玉はしっかりもらった

小学校も終わる頃父さんは煙になった
怒鳴り声と叫び声あの日私は知らないふりをやめた
恐ろしいほど静かでめちゃくちゃな部屋に飛び込み
母さんの体を拭き包丁をしまって外に飛び出した

病院を出た母さんと狭い汚いアパートに逃げた
列車が行く度大地震秘密基地みたいなとこだった
電車に乗って学校にいくのも面白かったけど
兄ちゃんの姿がどうしても見えなくて

中学一年になってから隣の町に引っ越した
新しい町と暮らしに父さんの影も消えた
母さんは母さんでなく一人の生きる女として
初めて弱さと強さを見せ一番の友達になった

一年余り暮らした町から又この町に戻ってきた
三人で手をつないで戻ってきた
それぞれの暮らしがあの浅い川のように
ゆっくり流れ出した

小さな町に戻って最初のクリスマス

一人で家に帰ると玄関に立てかけてあった
一輪の赤いバラとポインセチアの鉢植え
メッセージも何もなかったけどすぐに気づいた

背中に丘の夕日が消えていくのを感じていた
一人でここに来て置いてった姿を思った
涙が頬を伝って落ちた初めての静けさ
なんて静かな二つのプレゼント

ひとつひとつの悲しみの中父も母も兄もみんな
精一杯だった
私は一人しゃべって笑って知らないふりをしていたよ
それでも幸福としかいえない子供時代が終わった

自分らしく生きる事が
愛する事や許す事だと
知らないうちに学んでた
私の大切なあの時代

クリスマスが来るたび私の名前を
思い出す人がいるのを私は知っている
どんなに時が経ってもたった一瞬でも
その人はきっと私の名前を思い出してくれる

元気でいます
歌を歌っています
十二月二十五日
私は二十五になったよ


アルバム「窓の日」収録曲


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