何処からか また声が聞こえる
厭に近く それでいて遠い
綺羅(ぎら)つき濁り 滅裂な豪気
朽ちかけた体躯(からだ)と 傲然(ごうぜん)な頭は
現(げ)に滑稽なほど 頑とし決して融和しない
頸に纏わり付く 陰鬱な瘴気は
主を持て囃し 顎(くち)を開かせ行先(みち)を乞う
“栄華を誇ったあの時代は再び此処に訪れる”
情熱と希望を嘯(うそぶ)いた
――然程(さほど)由(よし)は――無い
嗚呼 体躯が不正(いびつ)に動き出す
誰も望まない死が先に在ると知って貴女を 誘(いざな)っていく
嗚呼 心が軋み喚叫(わめ)き出す
誰かが抱いた夢と絶望が織り成す泥濘(みらい)が 創られていく
蹄音(つまおと)が 不快に谺(こだま)する
行く宛は 唯一つしか無い
溟い 黯い 底無地獄
血だらけの両手と 腱の切れた脚は
その意を解さずに 其々(それぞれ)勝手に暴れだす
頸に纏わり付く 陰鬱な瘴気が
嘲笑(ほほえ)みを湛えて 尤もらしく語りかける
“何時かは貴様が冀(こいねが)う軛(くびき)を解くと神に誓おう”
幾星霜周りを見渡せば
――最早誰も――居ない
嗚呼 貴女を胸に抱き寄せる
誰も信じない希望がその目に強く強く 輝いている
嗚呼 私は孰(いず)れ霧と為る
貴女が抱いた夢を散散に曳き裂いた後で……
忠誠を誓え貴様の命は何だ?
さぁ忠誠を誓え!一人でも葬れる(すくえる)ように
忠誠を誓え貴様の命は何だ?
さぁ今すぐに逃げろ(ちゅうせいをちかえ)! 我(あ)の顔が振り向く前に!
その声は もう聞こえない
厭な夢を 見ていただけと
――いウノカ?