歌詞ナビ > For Tracy Hyde > Estuary
照らした陽を指で遊んで、忘れかけた歌を口ずさむ。流れ着いた陸の果てで、彼女はきっと夏をくゆらせて、誰かを待つ。
アイス・キャンディの欠片が、溶け出す前の夢のよう。ありふれた日のアイロニー。痛みを知った――痛みを知って、そこから息をしはじめた。
鉛色の命を抱いたおぼつかない鳥が飛び立てば、向こう髪を空に透かして、防波堤で砂を噛みしめて、裾を濡らす。
少女性を紐解いては、潤んだ目で、濁す口で、描いたフィクション。遠く鳴るジムノペディ。冷たい手で、竦む足で、水平線をたぐって夜を引き寄せた。
灯台はただ揺れるケーキ・キャンドル。「今日も、誰かのバースデイ」
シーグラスの欠片が、形にならない形を成した夢のよう。吹いて消して帰る哀の火。痛みを知った――痛みを知って、そこから息をしはじめた。
痛みを知って。
アルバム「Hotel Insomnia」収録曲
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