心が痩せた、と君は
コートの襟を立てた
逃げる様にたどり着いた
プラハの駅は冬の午後
許される
愛ではないと知りながら
終着駅で降りたふたり
石畳の広場へ
愛しかないのに
残されたのはそれだけなのに
モルダウに架かる橋で
声を漏らして泣き出した君
抱き寄せてしまえ、と
胸は言うのに
止める様に鐘が鳴る
帰りの切符を君に
一枚手渡したよ
なぜ?と見上げ涙零す
その目に嘘は無いけれど
さよならの
代わりにそっと口づけた
飛べないことを責めちゃいけない
帰る場所がある人
あなたと死ねると
君の言葉が枯葉の様に
モルダウに架かる橋を
渡り切れずに引き返す君
本当は心に
決めていたよね
止まり木を離れると
最終列車の
灯りが遠く消えるのを見た
モルダウに架かる橋で
ひとり佇み泣き出した僕
どうか幸せに
なって下さい
祈る様に鐘が鳴る