この広い街で呼びとめる
あなたは誰 幼ななじみ
くたびれた目をしてたでしょう
あまり急ではずかしい
聞かさないで今は なつかしいよび名
淋しさだけが支えなの
耳を 耳を ふさいで
腕を 腕を 払って
走り抜けるラッシュのホーム
ひとちがいにして
アドレスを教え合わなけりゃ
あなたとはもう会うこともない
ひきかえし元気?とききたい
人の波が隔てても
ふりむかない今は 帰ったら云って
似ている人を見かけたと
心 心 閉ざして
変わる 変わる 私は
つぎに つぎにすれちがっても
あなた 気づかない
聞かさないで今は なつかしいよび名
淋しさだけが支えなの
耳を 耳を ふさいで
腕を 腕を 払って
走り抜けるラッシュのホーム
ひとちがいにして
ふりむかない今は 帰ったら云って
似ている人を見かけたと
心 心 閉ざして
変わる 変わる 私は
つぎに つぎにすれちがっても
あなた 気づかない
[ Romaji ]
すれ違う瞬間に胸がざわつく様子がひとつながりの景色として伝わってきて、人ごみの中で出会いがかたちを変える不思議さに心が向きました。見慣れた名まえが遠くで響くような感覚や、今は言葉にできないから黙っておこうという慎み深さが丁寧に表現されていて、読んでいると自分もそのホームの端でそっと息をひそめたくなりました。相手を見つめたいのに見ないふりをする葛藤や、逆に目をそらすことで自分を守ろうとする弱さが同居していて、どちらの選択にも意味があることを改めて考えさせられました。何度すれ違っても気づかれないかもしれないという切なさが、繰り返しのリズムを通して静かに増していき、そこに流れる時間の重さが胸にしみます。人波に紛れてしまうときの孤立感や、昔の記憶を抱えながら今を生きるつらさが素直に伝わり、作者の視線がとても近くに感じられました。それでもどこかで相手のことを気にかけ続ける自分がいて、その小さな想いがやがて行動や言葉に変わるかもしれないという予感もあります。言葉を交わせない儚さを抱えつつも、心は確かに動いていることが表れていて、読み手も自分の中の似た記憶を静かに思い出すことができました。全体を通して感情の機微が繊細に描かれており、忙しい日常の合間に立ち止まって誰かを思う大切さをやさしく思い出させてくれる一編だと感じました。