冷蔵庫の中覗いた 牛乳からダメな匂いが
これじゃ悲しみのパンケーキつくれない
だから彼女は靴をはいた 無論買い物に行くためだ
そんなふうにして旅ははじまった
ふたりでよく食べたあの甘い味思い出してしまった
車はストアを通り過ぎて南へと進路を変えた
あふれた想いのカケラ拾っては海を目指した
初めて言葉にも出せた 「たまらなく愛したなあ」
いつか時は流れるから そのうち涙乾くから
「そんなのわかっているんだよ」
彼女は海へ行く
ゆるいカーブを幾度越えて 右折信号もやり過ごして
風がほのかに香り始めた
それも彼女は憶えていた ほろ苦くて少し笑った
「気持ちいいね また来ような 夕暮れに…」
他愛もない約束の時は指きりしない方がよかった
傾く西日がまぶしくてあと2kmの標識が滲んだ
こみ上げてくる波さえもそのままに海を目指した
強がり言わなくて済んだ 「ふたりで来たかった」
これ以上苦しむことないよ 充分気持ちはわかるから
「ほんとそんなんじゃないの」
もうすぐ海に着く
車を降りて彼女は砂浜の方へ
あふれた想いのカケラひとつづつ海に流した
最後にもう一度つぶやいた 「たまらなく愛したなあ」
無理に忘れることないよ 水面に面影映っている
「お腹が少しすいてきた」
彼女は海を出る