切り取られた星空の下、「聞こえる?」
続く道の夜の匂いに、ふるえる。
足下に影を落とす、外灯もないのに。
こんな、小さな、人の影。
じゃり道をクツの底でこすり合わせて、
まるでその影を消すかのように、
目を瞑り。耳を澄ませて。
その声に気付いて、彼の空、見上げる。
この手に抱える全てのものは
夜空にはあたり前で、
知りながら、光る。
抜き取られた言葉でも全部、伝わるの?
音も無く届く光は、これで全部なの?
生きていくその途中で、何もかもが
全て敵に見える時がある。
自分では望めないもの、欲しがってしまったり
無いものねだりの引き算が、体中をむしばんで
聞こえてきたその声に呼ばれて、
彼の空、見上げる。
この目にたたえる光の意味を
この手は知らずに、涙を拭う。
星の粒が降り落ちる。思考の回路が斜断する。
オリオン・シリウス・プレアデス
カペラ・ポルックス・ペテルギウス・アルゴ
プロキオン・アルデバラン。
地球の地軸が 回って 夜が 白む。
星の瞬きは、次第に 薄れ、やがて…
この手に抱える全てのものは
夜空にはあたり前で、
知りながら…
この目に拡がる全ての闇は
星空にはあたり前で、
知りながら、尚、光る。