あくびの仕方があなたによく似てしまったから今は、
これを愛だと呼んでしまうと思った。
ひび割れたネイルも、着膨れたニットの毛玉とか全部、
僕だけに見せるのが嬉しくて、虚しいの。
情熱に値札を、
少年に生きた挫折を。
当面の間は独りで散歩もいけやしないな。
ねえ、きっと君は忘れてしまうだろう。
君は忘れてしまうだろう。
だから、思い出さないで。
あゝ、夜明けに淹れた微温い珈琲も、
投げつけあった花束も、どこにも無くって。
朝焼けだけが眩しい部屋で、
まだ僕は恋を待ってる。
宅配の音がようやく訪れた夜を鋭く奪って、
火傷しそうな熱さの紅茶を、無様に啜った。
幸福に順序を、
生活に秘めた理由を。
もうちょっと経ったら夢も醒めてくれるだろう。
ねえ、きっと君は笑えてしまうだろう。
全て笑えてしまうだろう。
そんな事もあったねって。
あゝ、くだらない。
ふざけた僕の自意識も、
散らかったままの部屋さえも、
思い出ですらない何かに変わって。
傷つかない理由を探すのが上手くなって、
君よりちょっと、安心したいだけなのさ。
ねえ、きっと君は忘れてしまうだろう。
君は忘れてしまうだろう。
別に、理由も特になくて。
あゝ、夜更けに詰めた代償のスーツケースが
今、どこかの路地で朝を姦しく告げるだろう。
ねえ、きっと君は忘れてしまうだろう。
君は忘れてしまうだろう。
だから、思い出さないで。
あゝ、このまま昼間に君がいなくても、
まるで問題は無いだろう、
思い出増やして。
コンロの炎はうるさく燃えあげて、
まだ僕は恋を待ってる。
ただ僕は恋を待ってる。