雲が晴れてく
角ばった埋立地が
海に突き刺さり置いてある
砕けた硝子が
遠くまで散らばるように
青白い都市は透き通って
河川はきらめき
ソーラーパネルが並ぶ
いくつもの乱反射が交差する
塗装が直された 水色の橋が眩しい
重なる 公園の緑がずれてゆく
首をもたげた群れの重機は休む
幕がかかる柵の中でひそやかに
年代がバラバラのマンションに
光は等しく注いで側面に影を生む
ウィンドウ 開ければ なだれ込む 夏の風が
抱えた 近づく 雨の気配
君と僕の間にある マテリアルな世界を
見逃せなくて見つめてる
フォーカスを合わせてごらんよ どこへでも
茶柱みたいな煙突から 煙が昇る
何かが燃えてる 何かが燃えてる
高架下 自販機が真顔で光ってる
すぐそばのパーキングは「空」を掲げて
逆光の中で 広告はくりかえし
歩道の水たまりがそれに応えては
西日が街灯と橙の共演して
オフィスの避雷針は金色に変わる
信号と信号の変拍子が成り立って
人波が人波を飲んでゆく
僕の目の前を埋め尽くす マテリアルな世界を
穴があくほど見つめてる
現実は どこにあるの
加速する景色に触れる
光と影が滲み続ける
測れない代謝が進んでゆく
答えを置き去りにしたままで
雲に囲まれた 六分の五月が
優しく虹色放ちつつ
網戸の向こうで トラックが走り去る音
再び静かに包まれる
画面に表示したあなたの画質は
これからも悪くなるだろう
時間の距離はひらいて
目を閉じた暗闇に 複雑な模様が見える
渦の中へと落ちてゆく
心の中へと落ちてゆく
君と僕の間にある マテリアルな世界を
見逃せなくて見つめてる
フォーカスを合わせてごらんよ どこへでも いつでも