川べりにある映画館の レイトショーが終わって外に出ると
古びたオルガンのような風が吹いていた
鹿角の伺をついた老人とその老人のひざくらいまでの大きさの犬が
満月の夜にみどりのガケをゆっくりと歩きながら
涯ての鼓動を聴いている
船は6年前にもう降りて
踊るためだけに生まれてきたような
レベッカのことははるか昔に忘れてしまっている
世界は8割方朝のようで鳥のさえずりも聞こえる
目的なんてものは最初からなくて
目標なんてものは存在すらしない
ラブソングの偽善ほどおぞましいものはない
その場所で昼夜を問わず聞こえている
涯ての鼓動は彼を時には不安にさせ時には安らぎを与え
生きている実感をもたらす
「凍り付く寸前の冬の湖に映った君は吸い込まれそうなほどの
雪女に見えたよ」
「時間と光はどちらが速いのか?考えたことあるかい?
そんな無駄なことはしないってあんたやっぱり言いそうだよな」
明日はもうずっと前から始まっている
ノスタルジックなモノクローム
根を張るのが嫌いな性格はどこから来たんだ
希望の青と祝福の赤はいつ訪れてそして去っていくのか?
ラブソングの偽善ほどおぞましいものはない
ぼやけた景色が鮮明に蘇える時
彼はそのまま倒れ込む
川べりにある映画館の レイトショーが終わって外に出ると
古びたオルガンのような風が吹いていた