おてもやん あんたこの頃
嫁入りしたでは ないかいな
嫁入りしたこたァ したバッテン
御亭(ごて)どんが ぐじゃっぺたるけん
まァだ盃ァ せんだった
村役 とび役 肝(きも)入りどん
あん人たちの 居らすけんで
あとはどうなと きゃァなろたい
川端松つァん きゃァめぐろ
春日南瓜(かすがぼうふら)どん達ァ しりしっ張って
花盛り 花盛り
ピーチクパーチク 雲雀の子
ゲンパクなすびの イガイガドン
一つ山越え も一つ山越え あの山越えて
私ァあんたに 惚れとるばい
惚れとるバッテン いわれんたい
追い追い彼岸も 近まれば
若もん衆も 寄らんすけん
熊んどんの 夜聴聞(よじょもん)詣(まい)りに
ゆるゆる話も きゃァしゅうたい
男振りには 惚れんばな
煙草入れの銀金具が それが因縁(いんねん)たい
アカチャカベッチャカ チャカチャカチャ
[ Romaji ]
にぎやかな言葉の並びから、町のにおいや人の息づかいがむくむく立ち上がって、読んでいるだけで頬がゆるみました。早口の掛け合いみたいな音の運びが楽しくて、気持ちが走り出しそうになります。身の回りの小さな出来事を笑いに変える手つきが巧みで、強がりも照れもやさしく包まれていました。昔は方言の響きに戸惑った瞬間もありましたが、今は音の丸さが心をほどき、会話に混ざる気持ちで楽しめます。持ち物やしぐさひとつに物語が宿っていて、暮らしの細部が宝物のように見えてきます。遠くの丘や季節の合図がさりげなく転がり込み、景色に厚みが出るのが心地よかったです。賑わいの奥の素直なまなざしがかわいらしく、伝えたい想いが笑いのリズムに乗って届きます。言い切らない余白が想像を招いて、読んだ人それぞれの記憶と自然に混ざる感じが好きでした。今は肩の力を抜いて、ゆっくり耳を澄ませば、日常の中にも踊るリズムが見つかるとわかります。