夜の帳(とばり)が 裾野(すその)を包む
入日(いりひ)がにじむ 小倉山
逢いみての 恋しさ 切なさに
紅(べに)をさす 指を噛む
……ああ 胸の炎(ひ)が ゆらゆらと
焦(こ)がれて一人 今日も 恋人(きみ)を待つ
その場繕(つくろ)う 戯(たわむ)れならば
解(ほど)かぬものを 黒髪を
村雨(むらさめ)の 白露(しらつゆ) 槙(まき)の葉は
秘めごとの うつし絵か
……ああ 胸の炎(ひ)が ゆらゆらと
三十一(みそひと)文字に 熱く 綴る文(ふみ)
絹の褥(しとね)を 手さぐりながら
残り香(が)しのぶ 七日月(なのかづき)
瀬を早み 流れる 水音に
夢ならば 夢でいい
……ああ 胸の炎(ひ)が ゆらゆらと
明日(あした)は叶う 花の 恋ごよみ