旅路(たびじ)を行(ゆ)くは一方(ひとかた)の
畏(おそ)れを知(し)らぬ剛(ごう)の者(もの)
七分(しちぶ)過(す)ぎたるその刹那(せつな)
見(み)る目(め)敵(かな)わぬ巨大(きょだい)な壁(かべ)が
上(うえ)を下(した)へと取(と)り乱(みだ)し
途方(とほう)に暮(く)れて立(た)ち尽(つ)くす
明日(あす)の宵(よい)には山(やま)越(こ)えて
邑君(むらきみ)の許(もと)着(つ)かねばならぬ
嗚呼(ああ) 繋(つな)ぎ止(と)めた明日(あす)が
音(おと)もなく遠(とお)ざかり
繰(く)り返(かえ)す遺響(いきょう)の囁(ささや)き
想(おも)いは潰(つい)えたと泣(な)くより
この身(み)が朽(く)ちる際(きわ)まで 弛(たゆ)みなかれ
忌々(いまいま)しくもとぼとぼと
兵(つわもの)どもが夢(ゆめ)の跡(あと)
諦(あきら)むことも口惜(くちお)しく
持(も)ちたる杖(つえ)で裾野(すその)を掃(はら)う
信(しん)じ難(がた)きやおとろしや
何時(いつ)しか壁(かべ)は消(き)え入(い)らむ
八方(はっぽう)の手(て)を尽(つ)くさねば
答(こた)えは出(だ)せぬ此(こ)の世(よ)はをかし
嗚呼(ああ)咎認(とがみと)めたはずが
声(こえ)もなく立(た)ち竦(すく)み
蒸(む)し返(かえ)す回向(えこう)の呟(つぶや)き
想(おも)いは潰(つい)えたと泣(な)くより
この身(み)が朽(く)ちる際(きわ)まで 弛(たゆ)みなく
想(おも)いは潰(つい)えたと泣(な)くより
この身(み)が朽(く)ちる際(きわ)まで 弛(たゆ)みなかれ