(奥州街道南へ下ります 茨城名物数々あれど
梅の香りを筑波に添えて 霞ヶ浦の片帆舟…
よしきり騒ぐ芦陰で あやめ咲く日を待つ みなし子は
どこのどいつが捨てたのか 聞かせてやりてえ この歌を)
花を片手に 夕陽を呼んだ
坊は潮来(いたこ)の 豆鴉
父の名前は 忘れたろうが
あやめ咲くころ 戻るときいた
そうさ あやめの
そうさ あやめの 咲太郎
父は佐原の 江戸っ子だッぺ
つよい気性が 仇になり
村を出るときゃ ふたりで出たが
女ひとりが つれ戻されて
とんと 沙汰なし
とんと 沙汰なし 咲太郎
みどり豊かな 故郷(ふるさと)すてて
どこで泥水 すするやら
祭り囃子は 恋しくないか
せめてこの子が 曲がらぬうちに
戻れ あやめの
戻れ あやめの 咲太郎